グリーンの宝石というとエメラルドが有名ですが、8月の誕生石ペリドットは、透き通った黄緑色をしており、暑い8月の日差しを浴びて生い茂る草木のようなフレッシュグリーンからはエネルギッシュで生命力にあふれています。
発色の良い透明感あるグリーンの輝き、水滴のようなツヤ、みずみずしい煌めきは古代から多くの人々に愛され続け、身に着ける人の心を明るく照らしてくれます。
ペリドットの歴史
紀元前1500年には、エジプト人によってエジプト沿岸部の沖にある現在のセントジョンズ島で採掘され始めていました。
その当時、夜間の暗闇でも輝きを失うことなく光沢を放つことから、古代エジプト人からは「太陽の石」と呼ばれていました。
以前、エメラルドをこよなく愛したエジプトの女王クレオパトラのお話をしましたが、実際にはエメラルドではなくペリドットだったのではないかという説もあるようです。
11世紀から13世紀にかけて、ローマ人たちは十字軍派遣(キリスト教徒が聖地エルサレムをイスラム教徒から奪還するための軍派遣)の際にペリドットを持ち帰り、その透明感ある美しさから身に着けたり教会や聖堂に飾っていました。
その中でも1粒200ct以上のものがドイツのケルン大聖堂で現在においても飾られており有名です。
しかし、中世の人々は長らくエメラルドとペリドットを何世紀にもわたって混同し続けていたため、1904年に認知されるまで、その200ctのペリドットをエメラルドとして信じてきたようです。
ペリドットの原産地
主な産地としては、アメリカのアリゾナ州やハワイ、ミャンマー、ブラジル、スリランカ、パキスタン、ノルウェーなどになります。
古代エジプト人によって採掘され続けたセントジョンズ島では、採掘が禁じられているため残念ながら現在は産出されていません。
ペリドットはそれぞれの産地によって色合いや大きさが異なります。
世界供給量の80%以上を占めているアメリカのアリゾナ州で採掘されるペリドットは高品質なものも採掘されますが、黒や茶の色が強いものが多く、5ct以上のものは稀で、小さい小粒なものが採れます。
一方ルビーの産地でも有名なミャンマーのモゴック地方では大粒のものが採れます。
大粒のものはキズが多くカットも悪いとされていますが、職人によってリカットされ美しい上質なものが多く見受けられます。
ペリドットの鉱物名
ペリドットはマグネシウムや鉄のケイ酸塩鉱物のカンラン石(olivine:オリビン)の一種になります。
カンラン石自体は珍しいものではなく、ごくありふれた鉱物となっており、ペリドットはマグネシウムが80%、鉄が20%の比率で混ざり合った混合鉱物になります。
ペリドットの価値
ペリドットの色は黄緑色を中心として、黄緑色から緑色にわたります。
その中でも透明度の高い”オリーブ・グリーン”と呼ばれるものが市場において高値で取引されています。
逆に茶色を帯びているような色のものは低品質とされています。
また、ペリドットは溶岩の中に含まれていることも多く、マグマが地上に噴出したときに冷えてしまい割れてしまうものがほとんどです。しかし、その中でもヒビがなく大粒のものは希少性があり高値で取引されます。
ペリドットの特徴
ペリドットの大きな特徴としては複屈折になります。
複屈折とは、本来なら物質に光を入射させると一つの方向に屈折しますが、これが2つの方向に屈折することになります。
この複屈折をもっている宝石はペリドット以外にもルビー・サファイア・エメラルド・シトリン・トルマリン・トパーズなどがありますが、ペリドットほど顕著にあらわれません。
そのため”イブニング・エメラルド”という異名を持ち、暗い夜の照明の下では、驚くほど強い輝きを示します。
その反面、モース硬度は6.5~7(MAX10)で強い衝撃を加えると割れてしまうことがあります。
また、他の宝石に比べても柔らかい特徴を持っており、長年使用していると端の部分が摩耗し磨り減ることがあります。
ペリドットの取り扱い
前述の通りモース硬度が低いため、よく街中にあるジュエリー屋さんや眼鏡屋さんで設置している「超音波洗浄機」での洗浄はお控えください。
中性洗剤を溶いたぬるま湯に5分ほど浸け、柔らかいブラシなどで力を入れずに汚れを浮かせます。そして、最後に水洗いして汚れを流し乾いた布などで拭きとってください。
最後に
中世に入り技術の進歩があったにもかかわらず、ケルン大聖堂に飾られていたペリドットがエメラルドして認知されていたことは驚きで、きっと、古代の多くの人々もペリドットをエメラルドとして重宝していた可能性がありそうですね。
また、暗い照明の下で強い輝き放つペリドットは、夏のさんさんと照り続ける太陽を連想させ8月の誕生石としての地位を確立したのではないでしょうか。