2000年以降、金・プラチナの高騰により貴金属の買取を行うジュエリー買取専門店やリサイクルショップが増え続けており、不要になった指輪やネックレスなどを売却された経験をお持ちの方は非常に多いです。
その一方で、いざ売却しようと思っても、その製品自体に刻印がなく素材がわからない、刻印がないから買取してもらうことができないと、売却を断念している方も少なからずいらっしゃるようです。
しかし、その製品の素材が金・プラチナ・シルバーであるとジュエリー買取専門店やリサイクルショップの査定員さんが断定することができれば買取は可能です。
そこで今回はジュエリー買取専門店やリサイクルショップの査定員さんがどのような方法で査定を行っているのかをご紹介していきます。
目次
貴金属を買取しているお店で使われている道具や機材
ほとんどの製品には刻印が打刻されていることが一般的ですが、中には刻印がない製品、長年の使用によって刻印が薄れたもの、サイズ直しやクリーニングによって削れてしまったものがあります。
そのため、ジュエリー買取専門店やリサイクルショップでは、そのような製品であっても金・プラチナ・シルバーの素材はもちろんのこと、その素材の品位(純度)までさまざまな道具を使って買取を行っています。
ルーペ
ルーペは貴金属だけでなく後述する宝石を査定するときにも使う道具です。
他にはブランドバッグや財布などの鑑定を行う際にも使います。
中には名前を聞いたことがある方や見たことがある方もいらっしゃるでしょう。
主に貴金属に打刻されている刻印や傷、宝石のカットやカラー、クラリティなどを見たりします。
倍率は10倍や20倍などがあり、その商材によって使い分けています。
磁石
磁石は貴金属の査定を行う際に使われるアイテムのひとつになります。
金製品に近しい色をしている金メッキ製品や金張り製品を見極めるために使用します。
金製品と金メッキ製品や金張り製品では磁石反応が異なるので、その反応を見て買取の可否について判断することができます。
比重計
貴金属を買取しているお店であれば必ずと言ってもいいほど比重計は設置しています。
それは、たとえ刻印がない製品であっても比重検査を行うことによって、その素材や品位(純度)まで調べることができるからです。
使い方は、まず比重計で製品の重量を量り記憶させ、次に水槽に入れた状態で重量を量れば測定結果が表示される仕組みになっています。
ただ、空洞になっている製品になると測定することができません。
なぜかと言うと、水槽に入れても空洞箇所に水が入らないため少し軽くなり、正確に水槽内での重量を測定できないからです。
また、宝石がついている製品は、貴金属と宝石の比重の値が異なるため、空洞同様に測定することができません。
貴金属の重量を量るときに使用します。
一般的に貴金属の重量は小数点第一位まで計測されます。
写真の量りは300gまで計測できますが、それ以上の重量を量るときはさらに大きな重量計を使って量ります。
試金石と硝酸
試金石は黒くて四角い板上の石で、本物の金かどうかを試金石にこすりつけ、こすり痕の色味を見て判断します。
しかし、色味だけで判断するのは非常に難しいため、硝酸と合わせて使用することが多いです。
硝酸をこすり痕に極々少量を垂らし、こすり痕が消えないと本物、消えると偽物と判断します。
硝酸は劇薬のため使用の際は注意が必要です。
試金石と硝酸は買取店によって使っているお店使っていないお店があるようです。
余談ですが、試金石は江戸時代の金座(金貨の鋳造や鑑定などを行っていた場所)で使われていました。
X線分析装置
貴金属にX線を照射して品位を測定する装置で、刻印がない製品や比重計で計測できない場合などに使用します。
品位だけでなく貴金属の配合割合までわかります。
箱の形になっており、貴金属を中に入れボタンを押すだけで測定ができ簡単便利です。
しかし、X線装置は非常に高価な機器になるので、どこの買取店にでも置いているわけではありません。
宝石の査定で使われている道具や機器
続いてダイヤモンドなどの宝石を査定するときに使われる道具をご紹介します。
宝石の査定は貴金属とは異なり、見た目が同じような小さな宝石であっても、ほぼ値段の付かないものもあれば数百万円以上の価値を付けるものもあり、より慎重な査定を求められます。
ライト
ライトには卓上ライトとペンライトがあります。
卓上ライトは、主に宝石の鑑定や宝石の仕分けの際に使用されることが多いです。
一方のペンライトには白色や電球色などの種類があり、宝石に光を当て色味や透明度などを観察するときに使われます。
ブラックライト
ダイヤモンドの査定では4C以外にも蛍光性の強さを見る必要があるため、ブラックライトが必須アイテムとなります。
この蛍光性とは、炭素原子の集合体で生成されるダイヤモンドに窒素や水素が入り交わることがあり、その影響によって紫外線に反応し蛍光を起こすことです。
蛍光性にはNone (無し) 、Faint(弱い)、Medium(中)、Strong (強い) 、Very Strong (とても強い) の5段階があり、蛍光性が強ければ強いほどダイヤモンドの価値が下がる傾向にあります。
また、ブランド品によっては保証書に細工していることもあり、保証書の真贋を判断するときにも使用されます。
ダイヤモンドテスター
ダイヤモンドテスターはダイヤモンドか類似石かどうか真贋判断するときに使用します。
機材の先端に銅線が備えつけられており、銅線とダイヤモンドを接触させ熱の伝わりやすさを計測し、その数値からダイヤモンドと見た目の変わらない類似石を判別します。
ちなみに、熱の伝わりやすさを「熱伝導率」と言い、ダイヤモンドは1000~2000 W/(m・K)で、類似石のキュービックジルコニアは3~4 W/(m・K)と、全く伝導率が異なっています。
カラット天秤
宝石の重さ単位は「カラット(ct)」で表示することが一般的で、1カラット=0.2gで定義されています。
宝石があしらわれているジュエリーには鑑定書や鑑別書が付属されており、その宝石のカラット数が小数点第三位まで表記されていることが多いです。
これを踏まえ、たとえば0.001カラットの宝石であれば、0.001カラット×0.2g=0.0002gの重さになります。
一般的な秤であれば小数点第一もしくは小数点第二位までのものがほとんどですが、このカラット天秤は小数点第四位まで計測できる優れた機材で、わずかながらの風にも影響を受けやすいため、風防を備え付けています。
顕微鏡
貴金属の刻印や傷、宝石のクラリティを査定するルーペは10倍が主流で、さらに拡大したいときは20倍ルーペを使用します。
ただ、ルーペで見える宝石の内包物やカットにも限界があり、細部までチェックしたいときには顕微鏡が使われます。
顕微鏡の倍率は40倍、50倍に拡大して目では絶対に見ることができない微小な内包物まで確認することができます。
五感を使って査定することも?
貴金属や宝石の査定を行う際は査定道具を使うことが一般的です。
ただ、人には視覚、嗅覚、触覚、聴覚、味覚の五感があり、その五感を使い査定対象物を査定します。
視覚
状態が綺麗なのか、その素材の色味具合、宝石が欠けていないのか、まずは査定道具を手にする前には目でチェックを行います。
そして、ルーペや顕微鏡で拡大した対象物を見るのも目になり、ライトやブラックライトで宝石の色味、透明度、蛍光性を見るのも目であり、視覚は鑑定を見極める役割を果たしています。
嗅覚
指輪やネックレスなど貴金属がどこかしら怪しく感じたとき、においを嗅ぎ判断することもあります。
金、プラチナは無臭で、銀には銀特有のにおいがあり、メッキ品など偽物である場合、メッキ臭さや鉄臭さ、錆び臭さがします。
触覚
手で触った感触であったり、重さを感じ取ります。
触った感触と言うのは柔らかい、硬いなどであり、重さを感じ取るというのは軽いか、重いかの判断で、例えば同じ大きさをした金、プラチナ、シルバーの製品を持ったときに「軽い」「重い」と査定員が手に持った段階である程度断定しています。
これは、同じ大きさであっても物質によって密度が異なり、シルバーを「1」とすれば、金だと約「1.5」倍、プラチナだと約「2」倍の重さになるからです。
ただ、大体の重さで判断できるのも、経験豊富な査定員に限られます。
経験豊富な鑑定士の中には聴覚を使う方もいるようで、指輪を耳元で叩いてその音を聞いて判断ができる方もいらっしゃるようです。
五感で品位(純度)まではわかりませんが、査定対象物の状態を感じ取り、怪しいか怪しくないかなどの判別をする重要な役割を担っていることは間違いありません。
最後に
貴金属や宝石の査定にはさまざま査定道具を使います。
貴金属の査定はたとえ査定員の経験が乏しくても、ルーペや比重計、X線などの査定道具や査定機器を使いこなすことができれば、大方の商品の査定が行えます。
ただし、本物の金やプラチナに見せかけた偽物も多く出回っているため、五感である視覚、嗅覚、触覚も必要になる場合があり、宝石の査定には査定道具や経験のみならず知識、そして五感である視覚が必要です。
貴金属や宝石の査定にはさまざま査定道具があり、どこのお店に行ってもさまざまな査定道具を使いこなしているものの、査定でもっとも重要なのは五感である視覚なのかもしれません。