銀製品やシルバーアクセサリーをお持ちの方は多いかと思われます。
スプーンやフォーク、ナイフなどの銀製品である銀食器は出産祝い、銀婚式などで贈られることが多く、シルバーアクセサリーはプレゼントで贈られることはもちろんのこと、今ではさまざまなお店で取り扱っており、一度は自ら購入した経験をお持ちの方も多いはずです。
ただ、今使っているものが本当に銀なのか?
なぜ銀製品やシルバーアクセサリーは使っていくうちに黒ずんでしまうのか?
そもそも銀の価値がわからないという方も少なくありません。
そこで今回は、銀製品の見分け方や性質、価値、黒ずみのお手入れ方法などについて紹介していきます。
目次
銀(シルバー)の刻印
食器であればステンレスもあれば、ニッケルや真鍮にメッキしたもの、アクセサリーには銀系の合金や真鍮、ステンレスなどにメッキしたものがあります。
そのため、どれが銀であり、どれが銀でないのかパッと見て判断するのは非常に難しいです。
しかし、金やプラチナの仲間である銀には刻印が打刻されていることが多いです。
その刻印さえ覚えてしまえば銀色の素材の判別ができますので、代表的な刻印だけ紹介していきます。
・純銀/SILVER1000/ SILVER999/SV1000/SV999
純度100%の純銀、厳密には99.99%の純銀を使用しているという意味の刻印です。
・ SILVER970/ SV970
97%の銀を使用しているという意味の刻印です。
・SILVER950/SV950
95%の銀を使用しているという意味の刻印です。
・SILVER925/SV925/925
92.5%の銀を使用しているという意味の刻印です。
・STERLING SILVER/ STERLING
SILVER925、SV925と同じ意味の刻印です。
・ 銀製/SILVER
基本的には92.5%の銀を使用している SILVER925と同じ意味ですが、純度が高いものや低いものもあれば、全く銀を使用していないメッキ品も存在するため注意が必要です。
・洋銀
洋銀は銀ではなく、亜鉛やニッケルなどの合金になるので、銀製品ではありません。
・SP/SILVER.F/SILVER G
「シルバーメッキ」という意味の刻印です。
■SP= SILVER PLETED(銀メッキ)
■ SILVER.F=SILVER FILLED(銀張りメッキ)
■ SILVER G= SILVER GILT(銀メッキ)
銀(シルバー)の性質
貴金属である「金」「プラチナ」「銀」は目に見えない場所で多く使われており、その中でも特に「銀」は多岐に渡り、さまざまな用途で用いられています。
また、きれいな白銀色(しろがねいろ)の輝きをしている銀は使い続けていくうちに黒ずみ、銀の醍醐味である輝きが失われ汚く見えてしまうこともあります。
そこには銀のさまざまな性質や特徴などが関係しています。
①電気伝導率と熱伝導率
銀は電気伝導率(どれくらい電気が流れやすいか)と熱伝導率(どれくらい熱が流れやすいか)が金属の中で最大を誇っています。
電気伝導率は、電線などに使われている銅を100とすると・・・
高い順から、銀 = 103 金 = 76 アルミニウム = 64 ベリリウム = 55 マグネシウム=40
このように金属の中でもっとも電気伝導率が高いのは「銀」であることが分かります。
もちろん、この数字のみで判断すれば電線には銀の方が向いているかのように見えます。
ただ、銅の方が銀より豊富で安価のため電線に銅を使うのが合理的な解釈となります。
一方の熱伝導率は単位が「W/m・K」と表しています。
熱伝導率の高い順から、銀 =420 銅=398 金=320 アルミニウム=236 真鍮=106
電気伝導率同様に熱伝導率がもっとも高いのは銀になります。
②可視光線の反射率
可視光線とは電磁波のうち人の目で見える光のことで、光を反射させる反射率も金属の中で最大です。
そのため、銀製品、特に食器類はとてもきれいな輝きをしています。
たとえ食器類やアクセサリーが汚れてしまったり黒ずんでしまったとしても、きれいに磨けば元の輝きを取り戻します。
③展延性
展延性とは素材が破断せずに変形する限界のことで、1gの銀を2.2㎞の線に伸ばすことができます。
ちなみに1gという重さは、ぴったりとはいきませんが1円玉ほどの重さになります。
④化学変化しやすい
銀は金属の中でも化学変化しやすく黒く変色することがあり、硫化と言います。
硫化は空気中に含まれる硫黄化合物(自動車の排気ガス、温泉の硫化水素など)に反応して硫化銀が生成され黒ずみます。
また入浴剤や化粧品、香水などにも反応します。
人の皮膚も硫黄を含むアミノ酸でできていることから、アクセサリーを身に着けているだけで黒ずんできます。
もうひとつ原因があり塩化と言います。
塩化は塩素系漂白剤などが入っている塩素に反応し、塩化銀が生成され黒ずんでしまいます。
硫化した場合はご自身でお手入れしてきれいにすることができますが、塩化はご自身ではできないので誤って塩素系漂白剤などが付かないようにお気を付けください。
もし誤って塩化によって黒ずんでしまった場合は、ジュエリーの加工を専門に行っている業者さんなどにお願いすると良いでしょう。
⑤抗菌性
銀イオンは抗菌性・安全性に優れた抗菌効果があります。
ご存じの方も多いかと思いますが、制汗スプレーやマスク、ウエットティッシュ、浴室用の洗剤、消臭スプレーなど様々なものに使用されています。
銀(シルバー)のお手入れ
シルバー専用のクロスやシルバークリーナー、超音波洗浄機などを使えば黒ずみが取れきれいに輝かすことができますが、ここではご自宅にあるものを使用して黒ずみを除去する方法をご紹介します。
①歯磨き粉
研磨剤が含まれている歯磨き粉を直接アクセサリーに付けて柔らかい布で磨く、もしくは柔らかい歯ブラシで磨きます。
磨いたあとは、水で歯磨き粉を洗い流し、水気を拭き取りましょう。
②お酢
器などにアクセサリーを入れ、お酢をひたひたに注ぎます。
しばらく浸し、時々チェックしてきれいになっていれば水で軽くすすぎブラシで磨きます。
そして、最後に水で洗い流し拭き取ります。
ただし、ターコイズや真珠などの宝石が装飾されているものは変色の恐れがあるため、この方法はおすすめできません。
③塩
鍋にアルミホイルを敷きアクセサリーを入れ、浸るくらいの水を入れ、多めに塩を入れ数分煮ます。(水5に対して塩が1ほどの割合)
その後、水で洗い流し水分をふき取ります。
または、耐熱容器など熱に強い容器にアルミホイルを敷き、多めの塩とアクセサリーが浸かる程度の熱湯を入れ、20分程度待ちます。
その後、水で洗い流し水分をふき取ります。
どちらの方法でもあまりきれいにならない場合は、水で洗い流す前にスポンジやタオルなどで磨くと良いです。
④重曹
耐熱容器など熱に強い容器にアルミホイルを敷き、重曹大さじ1を入れ熱湯を注ぎ軽く混ぜます。
そこにアクセサリーを入れ10分ほど待ちます。
その後、水できれいに洗い流し、水気を拭き取ります。
これらのお手入れ方法は、いぶし加工と言ってわざと黒ずみさせているアクセサリーや、メッキ加工が施されているアクセサリーはいぶしやメッキが取れてしまうことがあります。
また、宝石が付いているアクセサリーは宝石が変色してしまう可能性があるのでご注意ください。
きれいにした後はひとつひとつを密閉容器などに入れ、空気に触れないように保管しておくと状態を保つことができます。
銀(シルバー)の価値
金やプラチナに比べ銀が安価であることをご存じの方は多いかと思われます。
ただ、安価であることを知っていたとしても、銀価格まで把握している方は意外と少ないようです。
では、現時点での価格はどのくらいなのか・・・
金=約6,600円、プラチナ=約4,700円、銀=約100円になります。
驚きの安さからビックリされた方もいらっしゃるでしょう。
銀が安価な理由はいくつかありますが、最大の理由は産出量の違いです。
現在、銀は年間で25,000トンほどのペースで産出されており、金の8倍(3,000トン/年)です。
また、地球に埋蔵されている量は400,000トンほどと言われており、金の埋蔵量60,000トンの約7倍もあるようです。
しかし、いくら銀の埋蔵量が多いと言われていても20年後には枯渇する可能性があります。
また、今ではアクセサリーや銀器類に限らず、身近な通貨、歯科材から電池、太陽光パネル、電気・電子機器に使われている半導体、化学触媒などの需要が年々増え続けています。
さらに、銀の性質上から今後多岐にわたり必需品になることも想定されますので、数十年後にはもしかすると銀の価格が跳ね上がることが考えられます。
最後に
銀の用途のほとんどは工業用ですが、私たちが目にし、手にできる製品は少なくありません。
銀器類(スプーン・フォーク・ポットなど)やシルバーアクセサリーはもちろん、大会などで授与されるトロフィー・銀貨・記念メダル、耳かき、扇子などの置物などがあります。
そしてこれらには基本的に品位を証明する刻印があるので、お持ちの方はぜひ見てみてください。
また、お持ちの銀器類やアクセサリーが黒ずんでしまってお困りの方は、一度お手入れの方法を試してみてください。
銀は安価ではありますが、お持ちのその銀製品には思い出や歴史が刻み込まれていると思いますので、ぜひ大切にお使いいただければと思います。