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金とプラチナどちらが価値あるの?


金とプラチナのバー

 

金とプラチナは枯渇する日も近いと言われている貴重な資源です。 

どちらも宝飾品の素材で使われることもあれば、工業用、医療用などでも活躍し、投資商品として市場でも高値で取引されています。 

ただ、近年の相場価格で比較してみると、プラチナ相場は金相場を下回る傾向にあります。 

その一方で、10年前20年前の相場で言えば、今とは逆転した相場になっています。 

そのため、現在でもプラチナの方が高いと思われている人もいらっしゃいます。 

では、どちらが価値のある貴金属なのでしょうか?

 

 

金という貴金属とは

ゴールドのインゴット

 

金の最大の特徴は無価値になることのない世界共通の価値が存在することです。 

世界にはさまざまな国や地域があり、それぞれに「円」「ドル」「ユーロ」などの通貨がありますが、これらは一定の地域で通用するものに限られます。 

また、世界情勢によっては価値を大きく上下することもあれば、各国の紙幣は最悪国が破綻してしまえば紙切れ同然となってしまいます。 

しかし、金は1つの国や地域で景気が悪化しても世界共通の価値が存在していることから、大きく価値を下げることもなければ、例え国が破綻しても価値が0になることはないのです。 

そのため、信用リスクがなく「安全資産」としてその地位を確立し、投資対象としても重宝され、2019年で言えば金需要の25%ほどを占めており、これは宝飾の50%弱に次ぐ割合です。 

 

次いで金には腐食性展延性という特徴があります。 

その特徴を活かし、エレクトロニクス分野にて活用されています。 

その代表例として、私たちの生活に必要となった携帯電話やパソコンなどの電気機器の基板です。 

さらに、近年では医療の発展とともに医療分野でも重要な役割を担っています。 

歯科医療の金歯に限らず、がん治療や関節リウマチ治療としても使われています。 

 

もしかすると近い将来、金がさらに活躍の場を広げ、あらゆる分野で活躍する日がくるかもしれません。 

 

 

プラチナという貴金属とは

プラチナの1gバー

 

プラチナは金と特徴が似ていることから、宝飾品に限らず工業用分野でも活用しています。 

特に高い需要割合をしめているのが、ディーゼル車の触媒です。 

全体の40%を占めており宝飾品の30%を上回っています。 

その他、医療分野やエレクトロニクス分野、投資分野として金と同様さまざまな分野で活用されています 

 

そして、金に限らず多くの金属との違いは限られた国や地域でしか産出されない希少性を持っています。 

そのため、毎年おおよそ200トン前後しか産出されません。 

ただ、毎年のプラチナ需要量は250トン前後と言われていますので、産出量から需要量を差し引くとマイナスとなり不足している状況です。 

その不足分に関しては、日本で言えばリサイクル店や買取店によって回収されたプラチナをリサイクルし、足りない分を補うこととなっているのです。 

もし、このリサイクル量で補うことができなくなれば、さら希少性を増す可能性があるでしょう。 

 

また、人類が今までに採掘してきた金の総量は19万トンに対しプラチナは7,200トンとなっており、金の4%に満たない量となっています。 

埋蔵量も、金の6万トンほどに対しプラチナは1.6万トンほどの1/4程度となっており、如何に希少性の高い貴金属であることを示しています。

 

 

景気に左右され価格がいつの間にか逆転

 

プラチナは金と比較しても、産出される量に限りがあり1980年代後半から20年以上もの間、金より高い価格を維持し続けてきました。 

その時代のイメージが根強く、今でもプラチナの方が価格が高いと思われている方も多いです。 

 

しかし、2008年に起きたリーマン・ショックで世界経済は大混乱を起こします。 

株価の大暴落もさながら、金やプラチナ価格も大幅な下落を見せました。 

特にプラチナの下落幅は大きく、当時の価格が数カ月でおおよそ半値近くの2,500円ほどとなってしまいました。 

それは、先行き不透明な経済状況に陥ったことによって、車の触媒で用いられていたプラチナ需要が後退し、プラチナ価格に影響を及ぼしたものです。 

一方の金は、3,000円から20%ほどの下落幅にとどまり、一時的に価格は下げたものの、数カ月で値を戻しました。 

 

その数年後、金はリーマン・ショック以前の1.5倍ほどの価格まで上昇し、プラチナも金価格と同等の価格まで持ち直します。 

ただ、以前のようにプラチナが常に金より高い価格で推移せず、度々逆転現象を起こすこととなります。 

それが、2015年以降はその現象が常態化し、現在の金価格はプラチナ価格のおおよそ2倍ほどとなっており、今では金の方が高いことが当たり前になっています。 

 

その背景には、先述の通り自動車の工業用需要と宝飾需要だけで70%以上を占めていることもあり、世界景気の後退が大きな要因となっています。 

その影響を及ぼしているのが、中国をはじめとする新興国の経済成長の減速です。 

当然のごとく、景気動向に左右されやすい自動車の工業用需要はブレーキをかけられ、日本と同じくプラチナ好きであった中国の宝飾需要にも影響を与えていると考えられます。

 

 

プラチナが金価格を超える可能性は? 

プラチナの相場上昇

 

プラチナの産出は、主に南アフリカ、ロシア、ジンバブエの3カ国だけで総産出量の90%以上を占めています。 

その3カ国の供給量が減少してしまえば、プラチナ価格が高騰する可能性は秘めています。 

実際に、2008年リーマン・ショック以前、南アフリカの財政難や鉱山会社の経営ストップからプラチナ価格が高騰し、一時は7,000円台後半の価格を付けています。 

また、今以上にさまざまな分野でプラチナの需要が増えることがあれば、価格上昇し金価格を逆転することは不可能ではないかもしれません。 

ただ、それまでには長い時間がかかることから、今の状況は今後もしばらく続くでしょう。

 

 

最後に

 

貴金属の中でも金とプラチナは常に比較される対象となってきました。 

それが今もなお引き継がれ続けているのは、私たち人類にとってより身近な貴金属であり、これからの将来も必要不可欠な存在であるからでしょう。 

 

また、金は投資分野として、プラチナは工業用分野に分けられ、その時代によってニーズが異なります。 

ただ、産出量からいうと明らかにプラチナより金のニーズが高いことと、現在の価格差からしても金の方が価値があると言ってもいいでしょう。 

それを逆転するには、プラチナには明確な強みが今以上に必要なのかもしれません。