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希少なプラチナの産出国と各国の需要


プラチナのインゴットバー

 

日本人の8割近くの夫婦がプラチナの結婚指輪を購入すると言われています。 

そのため、ブライダル専門店に行けば多くのプラチナの結婚指輪が陳列されており、宝石専門店やリサイクルショップに行ってもプラチナの指輪やネックレス製品が多く陳列されており、目にかける機会も多いことでしょう。 

しかし、プラチナの産出量は金に比べると採掘される量も限られ希少な貴金属です。 

今回は希少といわれるプラチナの産出国や用途、需要などを紹介していきます。

 

 

プラチナの産出国

プラチナの産出

 

プラチナは、この広い世界でも限られた国でしか産出することができません。 

現在、おおよそ年間200トンほどのプラチナが産出されていますが、2018年の実績値で言えば総産出量は190トンで、そのうち南アフリカ共和国で137トン(72%)、続いてロシアの22トン(11.5%)、ジンバブエの15トン(7.9%)で世界全体の90%以上をこの3国だけで占めています。 

そして、4位以下はカナダの7.4トン(3.9%)、アメリカの4.1トン(2.1%)、中国の2.5トン(1.3%)、フィンランドの1.5トン(0.7%)で、その他にはコロンビアやオーストラリアでも産出されていますが、年間でも数百キロ程度となっています。 

 

人類が今までに産出してきた量は7,200トンほどで、これは金の190,000トンの1/26の量となっています。 

この数字から見てもプラチナは金よりはるかに希少性がある貴金属のひとつになります。

 

 

プラチナの用途

プラチナのインゴットバー

 

プラチナと言えば宝飾品をイメージする方も多いのではないでしょうか。 

それは、指輪であったりネックレスなどを身に着ける機会が多く、身近に感じる存在であるからでしょう。 

しかし、プラチナを使った宝飾品の需要は全体の30%前後で、残りの70%前後は宝飾品以外の分野で使われています。 

 

プラチナの多くは自動車(ディーゼル車)がメインとなり、宝飾品需要の約1.3倍の40%前後を占めています。 

自動車の排ガスには有毒なガス(窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素)が含まれていますが、自動車触媒に通すことで二酸化炭素に変換することができるのです。 

その役割を担っているのがプラチナであり、自動車のマフラーに使用されています。 

 

その他にはペースメーカー・カテーテルなどの医療器具や液晶テレビ・パソコンのハードディスクの電化製品にも使用されています。 

日常生活において液晶テレビ・パソコンのハードディスクはこれからの時代も必要不可欠な存在であり続けるとともに、それに付随するプラチナも必要不可欠な貴金属であり続けることでしょう。

 

 

プラチナの需要と供給

 

プラチナの産出量が年間200トンほどに対し、用途が多岐にわたる2019年のプラチナ需要量はどの程なんでしょう。 

2015年~2018年までの4年間は産出量もさほど変わらず毎年190トン以上の産出量を推移しています。 

しかし、2019年の産出量は187.2トンで5年ぶり低水準となってしまいました。 

その一方でプラチナ需要は263.9トン(前年比:+21.6トン)となっています。 

そこにプラチナリサイクルの70.3トンを含めたとしても、ー6.4トンの供給不足となってしまっています。 

5年ぶりの産出減による影響もありますが、そもそもの需要が大きく増えています。 

 

では大きく増えた2019年の用途別需要をみていきましょう。 

自動車触媒は90.6トン(前年比:-1.4トン)で3年連続で減少しています。 

これは世界シェアの半分を占めていた欧州の触媒需要が大幅に減少したことが大きな要因です。 

 

宝飾品は64.8トン(前年比:-5.5トン)で6年連続で減少しています。 

ピークの2013年には92.8トンの宝飾需要がありましたので、その当時と比べると30%減となっています。 

その大きな要因は世界の宝飾需要を占めていた中国の減少が大きな影響を与えているとされています。 

 

産業用需要は73.3トン(前年比:-4.2トン)で前年比で減少しています。 

ただ、2018年の需要は過去最大の需要量だったことも影響します。 

2018年までの間、6年連続で増加傾向にあり、2012年の需要48.2トンから比較すると2019年は+25.1トン(34.2%増)で、自動車触媒や宝飾品とは違い増加傾向にあります。 

 

最後に投資のプラチナ需要は35.2トンとなっています。 

その年のプラチナ相場にも影響しますが、2019年はこの10年でも最大で、例年の10トン~30トンを推移している量からみても大幅に増加しています。 

 

年々、自動車触媒や宝飾品需要は減少傾向にあるものの、産業用での需要が増えており、ここ10年240トン~260トンのプラチナ需要を推移しています。

 

 

プラチナの地域別需要

 

プラチナの需要が最も多い地域は中国になります。 

2013年の75.1トンをピークに減少傾向にはありますが、それでも2018年には68トンほどの需要量を誇り、今もなお世界一の需要大国となっています。 

 

続いては欧州となります。 

2016年にピークの64.8トンの需要量を誇りましたが、徐々に減少しており、2018年には60トンを下回っています。 

 

その次に欧米、日本と続きます。 

欧米は毎年35トン~40トンで需要量が推移しており横ばい状態となっています。 

そして、日本の需要量は2014年(23.5トン)から2015年(38.1トン)にかけて大幅に増加したものの、2017年(29.9トン)には30トンを下回り、それからは30トン前後を推移しています。

 

 

最後に

 

今では金相場の上昇によりプラチナ相場と金相場が逆転していますが、産出国や産出量からみても限定されており、如何に金より希少性が高い貴金属であることが分かったかと思います。 

また、日本の需要率は世界全体の10%を超えていますが、これは現在限られた国や地域でしか需要がないから安定的に輸入されているもので、もし金の宝飾品をメインにしている世界各国の需要が高まれば、日本の需要と供給のバランスがとれなくなるとともに、その希少性から、この先今以上の価値を生み出す日が来るかもしれません。