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コラム

さまざまな用途で活躍する金の需要


金のインゴット

 

私たち人類と「金」の出会いは今から5500年ほど前のメソポタミア文明まで遡ります。 

そして、非常に長い歴史を一緒に歩んできています。 

その時代によって使われる用途は違えど、今では私たちの生活に欠かせない存在であり、意外と知らない場所で活躍していることが知られていないこともあります。 

そこで今回は、さまざまな用途で活躍する金について紹介していきます。

 

 

世界の金需要の割合

 

金の用途として真っ先に思い浮かべるのは指輪やネックレスなどの宝飾品になるかと思われます。 

その他には金投資であったり、携帯電話やパソコンを想像する方も多いでしょう。 

 

では、実際に金需要がもっとも多い用途は何になるのでしょう? 

それは皆さんが真っ先に思い浮かべた宝飾品需要になります。 

2019年の金需要全体は4,355トンとなっており、そのうちの2,107トン(48.3%)が宝飾品需要で、全体の半分ほどを占めています 

ただ、2013年の2,726トンをピークに減少傾向になってきております。 

これは、金価格の高騰によって材料費が高くなり、宝飾品の買い控えが起こっているように思われます。 

 

続いて需要が多い用途として、投資になります。 

2019年の1,271トンは前年比でプラス100トンで大きく伸びています。 

その他には公的機関(各国の中央銀行)の購入が650トン、産業用需要の327トンが続いています。

 

 

宝飾需要がもっとも多い消費大国

 

もっとも需要の多かった宝飾需要では中国とインドで、全体の占める割合は50%~60%とも言われています。 

それは、まず人口がそもそも多いので、必然的に占める割合が多くなるからでしょう。 

ただ、今の世界の人口は77億人で中国の13.9億人、インドの13.5億人では全体の35%なので、それ以外にも理由があることになります。 

他に考えらるのは、中国の人民元安であったり、インドの86%を占める500ルピーと1千ルピーの高額紙幣の突如の廃止により、世界共通価値の金が見直されたことが考えられます。 

更には、インターネットの普及により通販サイトから宝飾品が手軽に購入できるようになったことが、最大の理由かもしれません。 

  

また、近年では経済成長が安定し、販売ネットワークが整理されてきたベトナムでも金需要が増えてきています。

 

 

金の投資

 

金を金融資産として投資することを「金投資」と言います。 

近年では個人で保有されるケースが増えてきています。 

世界各地での紛争やテロなども多ければ、政治・経済の混乱もあり、まだまだ世界情勢は不安定です。 

そのため、世界情勢の変化に強いことから、安全資産として金投資する方が多いようです。 

更には、各国が発行している紙幣も、国が破産してしまえば単なる紙切れとなってしまいますが、金は価値がなくなることもなければ、世界どこでも換金できることも理由として挙げることができます。 

 

特にここ20年ほど見ても金投資需要が増えてきています。 

2007年までは300トン~700トンを推移していましたが、2008年のリーマンショック以降は2013年~2015年の850トン~960トンを省き、1170トン~1750トンほどを推移しています。 

この数字から見ても、世界情勢を不安視している方が多く、金投資は相場の上がり下がりはあったとしても安全性が高い商品であると認識されてきた結果でしょう。

 

 

公的機関の購入

アメリカ公的機関

 

世界の公的機関の購入量は2019年時点で34,500トンに及んでいます。 

2009年以前は買いより売りの方が強く、毎年200トン~600トンほどの売り越していたものの2010年以降は、毎年500トンほどの買い越しで推移しています。 

これは、2010年の欧州債務危機で国の信用力が低下したことが大きな理由にあたります。 

 

2019年度時点での金保有国上位は1位アメリカで全体の23.5%にあたる8,133トンで、続いてドイツの3,366トン、イタリアの2,451トンになります。 

近年では積極的な購入国として、ロシア、中国、インド、トルコが中心で、2019年に限ってはポーランドやセルビアなどの東ヨーロッパ諸国が多くなっています。

 

 

私たちの生活にかかせない存在

 

2019年の産業用需要は全体の7%ほどですが、私たちの生活で身近な存在として活躍しています。 

それは、携帯電話やパソコン、デジタルカメラ、ゲーム機などに使われています。 

もし、金という存在がなければ、ここまで普及するには至らなかったかと思われます。 

 

他には医療用として使われることもあります。 

医療用と言えば、真っ先に歯科医療の金歯を想像する方も多いかと思われますが、近年ではさまざまな活用がされています。 

 

 

携帯電話やパソコンでも使われている

金が使われている携帯電話とパソコン

 

携帯電話やパソコンなど、さまざまな電気機器の基板に金のメッキが使われております。 

その他にも銀やパラジウムといった貴金属も使われることもあります。 

 

では、他の貴金属ではなく、なぜ金が使われることが多いのでしょう? 

それは、機器の内部で金属同士を接触させ接続する箇所に接触抵抗の低い金が非常に相性が良いからです。 

接触抵抗が低いとは、電気の流れを妨げることがないように電気を通すことになります。 

また、なぜ金が接触抵抗が低いかというと、摩耗性や耐久性などが優れており、長年使用していてもサビにくい特性を持っているからです。 

更に、あらゆる金属の中でも展延性が優れていることからメッキに向いていることも挙げられるでしょう。 

逆に、接触抵抗が高いとは、摩耗性や耐久性などが劣り、長年使用しているとサビる可能性があり、それによって電気を通さなくなってしまうことです。

 

 

医療の分野でも活躍

 

以前までは歯科医療で金歯を使用するケースも多かったかと思われます。 

しかし、近年では医療の発展とともに、銀歯やセラミックを使用するケースが増えてきています。 

また、金歯は保険適用外でキラキラと目立つことを嫌う人も増えており、以前と比較しても金歯を使用している人も減少してきております。 

 

ただ、銀歯であれば、銀は歯より硬いと言われており、歯の上から銀歯を被せても隙間ができてしまい、それらが原因で虫歯になることがあります。 

また、酸化し溶けた金属イオンによってアレルギーを後々引き起こすことが考えられます。 

セラミックは分かりやすく言えば、陶器みたいなものです。 

そのため、あまりにも硬いものを食べたりすると欠けてしまうこともあるでしょう。 

そういった点で言えば、金歯は展延性や耐久性が優れているので、食材を噛んでいくうちに歯に馴染み隙間を埋めてくれ、酸化することもほとんどなければ、欠けることもないので、一番力の加わる奥歯などでしたら金歯がもっとも理想と考えても良いかもしれません。 

 

また、近年ではがん治療や関節リウマチ治療で使われることが多くなっています。 

金属の容器の中に金やイリジウムを入れ放射線を患部に照射したり、ペースト状にした金を治療剤に混ぜ合わせ、関節リウマチ治療で使われています。

 

 

最後に

 

金は宝飾品に限らずさまざまな分野で活躍しており、私たちの生活には欠かせない金属のひとつです。 

もし、金がなければ、当たり前のように使っているパソコンであったり、携帯電話が今ほど便利に利用できなく、人類がここまで発展していなかったのではないでしょうか。 

今では、医療の分野でも活躍していることから、この先、更に広い分野で活躍することがあるかもしれません。