国や地域によっても違いはありますが、サンゴは3月の誕生石のひとつです。
3月の誕生石として有名なのは「アクアマリン」なので、ご存じの方は少ないかもしれません。
ただ、サンゴは真珠とともに海の2大宝石として有名で、別名「コーラル」とも呼ばれ、宝石として使われたり、美術品や工芸品としても使われています。
そして、あまり知られていませんが、植物ではなく実は動物なんです。
そんな、海の宝石として呼ばれているサンゴを今回は紹介していきます。
目次
宝飾品として使われる「サンゴ」とは?
一般的に一括りで「サンゴ」と呼ばれていますが、「宝石サンゴ(八放珊瑚)」と「造礁サンゴ(六放珊瑚)」の2つに分類されています。
宝石サンゴ(八放珊瑚)
宝石サンゴは「深海の宝石」とも呼ばれています。
ただ、深海と言っても、想像してしまう深さではなく、浅い深海である100メートル~1,500メートルほどの太陽の光が届かない冷たい深海に生息し、複雑な海底地形の至るとこに点在しています。
別名、八放珊瑚とも呼ばれていますが、これは触手(自由に伸縮・屈曲する細長い突起)が8本に分かれているためです。
成長の過程は、微小な浮遊物を捕食し、成長速度は年数ミリほどと言われ、長い年月を経て形成されますので、簡単に折れることもなければ崩れることもありませんので、古来より宝飾品として使われています。
造礁サンゴ(六放珊瑚)
造礁サンゴは太陽の光が届く水深50メートルまでの温かい海に生息しています。
そこにはきっちり理由があり、サンゴ単体では成長していくことができないからです。
そのため、サンゴは褐虫藻と呼ばれる藻類と共生しており、その褐虫藻はサンゴの成長に必要な酸素や栄養分を与え、その代わりに光合成に必要な窒素やリンをサンゴからもらっているため、太陽の光が届く水深に生息しているのです。
別名、六放珊瑚と呼ばれ、宝石サンゴが8本に対し、6本もしくはその倍数に分かれているからです。
成長速度は非常に早く、年数十センチ成長することもあります。
ただ、成長過程が宝石サンゴに比べると早いためか、中がスカスカで軽く、ボロボロに崩れることもあれば光沢もないため、宝飾品としての加工には不向きです。
宝石サンゴの歴史
宝石サンゴの歴史は古く、紀元前2万5千年前の旧石器時代から使われていたとされ、ドイツの遺跡から当時の装飾品が見つかっています。
ギリシャ神話にも登場しており、ペルセウスがメドゥーサと戦い、メドゥーサの首を撥ねて天高く飛んでいきます。
その時、メドゥーサの首からしたたり落ちた血が海に落ち、そのに触れた海草がサンゴになったと言われています。
また、キリスト教では十字架に架けられた神の子イエス・キリストの血がサンゴの色だとされています。
そのため、ヨーロッパでは魔除けとして扱われるようになったと言われています。
現在のイタリアでは無病息災、健康祈願で年末年始に後述する赤珊瑚や地中海珊瑚を身に着けたり、フランス王室では安産祈願として出産時に赤いネックレスを身に着けたりしています。
日本に現存する最古のサンゴは752年に聖武天皇と光明皇后が東大寺大仏開眼会に使用された冠を飾っていた珊瑚玉(ビーズ)で、正倉院に保管されています。
江戸時代初期には地中海のサンゴが輸入されていますが、舶来品のため高価で富裕層や武家の装飾品にだけ使われるようになります。
江戸時代後期には、一般庶民にも広まり、印籠や煙草入れ、かんざし、くしなど大流行します。
明治時代になり高知県で初めてサンゴ漁が始まり、とても質が良く大きいサンゴが獲れるためヨーロッパにも輸出されるようになり、高い評価を得ました。
現在でも高知県の特産品で「血赤珊瑚」と言われる血液のような色をしたものは「トサ」の代名詞で世界に知られています。
宝石サンゴの種類と特徴
宝石サンゴには赤(紅)珊瑚、地中海珊瑚、桃色珊瑚、深海珊瑚、白珊瑚などがありそれぞれ違いがあります。
赤(紅)珊瑚
血赤珊瑚とも呼ばれ、まさしく血液のような赤色をしており大変美しいです。
採取量は少なく希少価値があり、中でも赤黒い色の血赤珊瑚は最高級品の価値があります。
海外でも採れますが、日本の高知県で採れる赤(紅)珊瑚は非常に高品質で海外に輸出されています。
地中海珊瑚
サルジや胡渡り(ペルシャを渡ってきたという意味)と言われ、イタリアのサルジニア島近海に生息しています。
赤(紅)珊瑚に似ていて美しく、赤黒色ほど価値が高くなります。
桃色珊瑚
日本近海の広い範囲に生息している桃色のサンゴですが、オレンジや赤(紅)珊瑚に近い色など色調が幅広く、彫刻細工に用いられることがあります。
高知県で採れる桃色珊瑚は品質が良く、ムラやキズがなく美しいピンク色のものは希少で価値が高くなります。
また、桃色珊瑚にはボケサンゴと呼ばれ、ほのかにピンクが入っており、現在では採れなくなってしまい幻のサンゴと言われています。
深海珊瑚
白を基調とし、中にはピンクや赤系色の模様が入っている個性的な珍しいサンゴで東シナ海やハワイのミッドウェイ沖の生息してます。
深海ということもあり、深さ1,000メートルを超える海底から水揚げされます。
白珊瑚
白色をしているサンゴですが、象牙のような色合いをしているものは希少性があり価値も高くなります。
東シナ海から日本近海の広い範囲に生息しています。
宝石サンゴの取り扱い
サンゴは宝石として使用されるので硬いと思うかもしれませんが、成分は炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムなどで、他の宝石のように硬くはありません。
モース硬度(MAX10)は3.5と柔らかくキズが付きやすく、酸に弱く汗などで変色したり艶がなくなったりしてしまい、とてもデリケートな宝石です。
そのため、普段使用する場合はなるべく肌に付かないよう服の上から身に着けたり、帰ってから柔らかい布などで優しく拭いてください。
熱や火、紫外線にも弱いため、暖房の近くに置いたり、身に着けたまま料理などしないように気を付け、保管は涼しい場所で干渉を受けないよう保管しましょう。
最後に
サンゴは鉱物とはまた違った美しさや魅力があり、今や宝石サンゴは日本を代表する宝石になりました。
ただ、近年では温暖化の影響や密猟などの影響で生息自体が危ぶまれています。
そのため、近い将来、宝石サンゴの価値、特に良質なサンゴは更に価値が高くなり入手困難な状況になることが予想されますので、今以上に高騰する前に1つくらいは手に入れてもいいかもしれません。