古代大地のシンボルとされたサファイア
古代ペルシャ(現イラン)の人々はサファイアが大地を支える石で空に反射し青い空を写し出していたと言われ「天と地に最も近い宝石」とされていました。
また、天空の色とつながりが深いことから最も神に近い石ともされ、聖職者や賢者、僧侶、平和を信じる人が身に着けていた宝石でもあります。
サファイアの歴史
古代ギリシャや中世ヨーロッパでは目に良い宝石であり、毒薬効果もある宝石であると信じられ、当時の王や王妃は指輪や冠にして重宝されていた宝石だったようです。
13世紀末には、皆さんもご存じ‟東方見聞録”で有名なマルコ・ポーロがヴェネツィア(イタリアの東北部)から東方へ旅に出て24年後ヴェネツィアに戻ったとされています。
その旅の間、モンゴル帝国の皇帝「フビライ=ハン」にサファイアを献上したとして、マルコ・ポーロは厚遇されたそうです。
また、マルコポーロはセイロン島で良質なサファイアなどが採れることを見聞録に記し、ヨーロッパ各地に具体的に知らせたと言われています。
近年で言えば、1981年2月に英国のチャールズ皇太子が故ダイアナ妃にプロポーズし、ブルーサファイアが飾られた婚約指輪が贈られました。
きっと、いつの時代も権力者から重宝され続けている宝石になるんでしょうね。
サファイアの原産地
サファイアの産出量の多くは、インド、タイ、ミャンマー、カンボジア、スリランカ、オーストラリア、タンザニアなどの国で産出されます。
その中でもインドとパキスタンの国境に位置するカシミール地方で産出されるサファイアは落ち着いたコクのある青色の美しさで「コーンフラワーブルー」と言われ、ミャンマー産の深みのある青色は「ロイヤルブルー」言われ、それぞれ高値で取引されています。
インドのカシミール産やミャンマー産以外の各国で産出されるサファイアにもそれぞれ特徴が異なっており、タイ産やオーストラリア産は黒っぽく、スリランカ産はわずかに紫っぽい特徴があり、詳しい人なら見ただけでも産地を当てれるほどと言われています。
サファイアの鉱物名
以前、ルビーの鉱物についてお話ししましたが、サファイアはルビーと同じ「コランダム」という鉱物に属しています。
少し内容が重複してしまいますが、元々「コランダム」という鉱物は無色で、そこにある種の不純物を微量取り込むことによって色が発色し、赤色はルビーとなり、その他の色はサファイアと定められています。
赤色のルビーは1%ほどの「クロム」という元素を取り込んで赤く発色するのに対し、ブルーサファイアは「鉄」「チタン」などの元素を1%ほど取り込んで青色に発色し、「鉄」の量を多く含んでしまうと濃い青色となり黒っぽくなってしまいます。
ただ、難しいことに「コランダム」に「クロム」を含んだとしても全てが赤く発色するわけでもなく、含む量が少なくなればピンク色になります。
基本的にルビーの条件は主要色が赤色なので、ピンク色の場合はサファイアに属することになります。要は、サファイアに含まれる不純物は「鉄」「チタン」だけにとどまらず、「クロム」も該当しますので、赤みがかったピンク色の宝石になると境界線が難しくプロの鑑定士でも意見が分かれることもあるそうです。
サファイアの価値
サファイアはまず「カラー(色)」「産地」で判断し、そのあとに「クラリティ(透明度)」「テリ(輝き)」を総合的に判断し価値が付けられることが一般的です。
前述の通りカシミール産のサファイアは美しい宝石としておよそ100年以上も前から採掘が行われており、当時イギリス王室の御用達として愛されていた宝石になります。
ただ、100年以上も前に大量に採掘されたこともあり、今ではその採掘が終わったと言われ、ほとんど産出されませんので、その希少性やサファイアそのものが持っている美しさからカシミール産の「コーンフラワーブルー」が最も価値があるとされています。
ミャンマー産の「ロイヤルブルー」は色鮮やかなブルーサファイアではなく、ブルーにパープルがかった色をしています。その中でも明るすぎず暗すぎないものが最も価値があると言われ、カシミール産の「コーンフラワーブルー」同様に価値があります。
サファイアの特徴
サファイアはルビーと同じ鉱物のため耐久性は非常に優れています。
そのため、割れる可能性なども低く普段使いするジュエリーとしては最適と言っていいでしょう。
サファイアの最大の特徴と言えば、カラーのバリエーションが非常に多く、一般的に知られているブルーから始まり、ピンク、イエロー、グリーン、オレンジ、パープルなど様々な色が存在しています。
どの宝石もインクルージョン(内包物)が少ないものが価値があるとされ、サファイアに限っても同じことが言えます。
しかし、このインクルージョン(内包物)が複数の針状に配列された反射によって、スター効果(中心より6本の光のすじ)を表すものもあり、これを「スターサファイア」と呼んでおり、他の宝石にはない特徴をもっています。
※サファイアの取り扱いについては、ルビーと同じ鉱物になりますので、こちらをご参考ください。
最後に
古代から現代にかけ、その時代の権力者である王や王妃、皇帝らを魅了し続けているサファイアにはブルー色の美しさだけではなく、透き通った青空のように爽やかな気持ちにさせてくれる力が働いているのでしょう。
また、他の宝石とは異なり色のバリエーションも多ければ、スターサファイアと呼ばれるものも存在し、ひとつの宝石で色々楽しむことができる唯一の宝石になるのではないでしょうか。