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コラム

さまざまな異名を持つ6月の誕生石アレキサンドライト


カラーチェンジするアレキサンドライト

 

6月の誕生石は3つありますが、その内の1つがアレキサンドライトです。 

宝石やジュエリーに興味がある方ならご存じかと思いますが、名前は聞いたことがあっても、どのような宝石か知らない方も多いのではないでしょうか。 

 

「皇帝の宝石」「宝石の王様」「幻の宝石」などの異名を持ち、昼夜で色が変わるため「昼のエメラルド」「夜のルビー」とも言われ、四大宝石であるダイヤモンド・エメラルド・サファイア・ルビーに加えられ、五大宝石としても扱われることもあるアレキサンドライトをご紹介します。

 

 

アレキサンドライトの歴史と名前の由来

 

アレキサンドライトの歴史は他の宝石に比べると非常に浅く今から約200年前の1830年、ロシアのウラル山脈にあるエメラルド鉱山で発見されました。 

始めはエメラルドだと思われていましたが、夜になると赤色に変化していたため、不思議な珍しい宝石とし、ロシアの皇帝ニコライ1世に献上されることになります。 

諸説ありますが、ニコライ1世に献上された日が皇太子アレクサンドル2世の誕生日だったため、アレキサンドライトと名付けられたという説やアレキサンドライトが発見された日がアレクサンドル2世の誕生日だったことから名付けられたようです。 

 

また、アレキサンドライトの緑色と赤色は、ロシア帝国時代の軍旗や軍服を連想させる色だったため、身を危険から守る護符として愛用されていました。 

1900年以降はロシアに限らず世界各地で産出されるようになり、今ではその色を楽しむ愛好家たちの憧れの宝石として人気を誇っています。

 

 

アレキサンドライトの原産地

ロシアのウラル山脈

 

初めて発見されたロシアのウラル山脈では残念ながらほとんど採掘することができなくなってしまいました。 

そのため、ロシア産のアレキサンドライトは希少性さもさることながら、非常に高品質のため、滅多に市場には出てこないと言われています。 

現在では、ブラジル、インド、スリランカ、タンザニアなどのから産出され、特にブラジル産のアレキサンドライトはロシア産並みに高品質のものが採れますが、産出量が少なく非常に希少です。 

その他の地域で産出される多くのアレキサンドライトは大粒ですが、色の変化が弱いため、評価が低いものが多いようです。

 

 

アレキサンドライトの鉱物名

アレキサンドライトの鉱物

 

アレキサンドライトは「クリソベリル」という鉱物で、和名は「金緑石」と言い、キャッツアイやクリソライトという宝石の仲間になります。 

和名からわかるように、クリソベリルは本来、黄色から緑色をしている鉱物です。 

その鉱物に微量のクロムが含まれ、そのクロムによって光が吸収されたり反射することによって、色が変化する性質を持つ宝石だけを「アレキサンドライト」と呼んでいます。

 

 

アレキサンドライトの価値

綺麗なアレキサンドライト宝石

 

一般的にアレキサンドライトの価値を決めるのは、色、クラリティ、カットの3つです。 

ここまで色の変化に少し触れてきましたが、具体的には太陽光で見ると緑から青の寒色に見え、蛍光灯やろうそくの下で見ると赤から紫の暖色に見えるものが、価値の高い上質なアレキサンドライトとして評価されています。 

この色の変化はロシア産、ブラジル産には見られますが、スリランカ産は黄緑っぽい色から赤茶色、タンザニア産は青や緑からピンクがかった紫色に変化します。 

しかし、どちらも発色があまり良くなく、変色幅も小さいので価値が下がることが多いです。 

 

クラリティは、基本的にインクルージョン(内包物)が含まれていないものが多いです。 

その中でもインクルージョン(内包物)が含まれていれば、評価は下がってしまいます。 

 

カットは見た目の形とバランスも大事ですが、アレキサンドライトはカットによって変色幅が左右されます。 

要は、いくら形の綺麗なカットを施しても、そのカットによって変色幅を小さくしてしまえば評価が下がることになります。 

そのため、カットが非常に重要な価値基準になると言えます。

 

 

アレキサンドライトの特徴

様々な色のアレキサンドライト

 

最大の特徴は色の変化、カラーチェンジでしょう。 

カラーチェンジする宝石はサファイア、ガーネットなどがありますが、アレキサンドライトのカラーチェンジは他の宝石の中でも突出しています。 

一般的には2色にカラーチェンジしますが、中には3色にカラーチェンジをするアレキサンドライトも存在するようです。 

 

また、アレキサンドライトキャツアイという猫目が現れる宝石もあります。 

キャッツアイ効果にカラーチェンジ効果を持っている宝石は非常に希少です。 

 

アレキサンドライトの多くは小さく、ほとんどが1カラット未満です。 

多くの宝石は一般的に色を濃くしたり、インクルージョン(内包物)をわかりにくくしたりと、何かしら人工的な処理を施すのですが、アレキサンドライトはカラーチェンジという特性があるため、処理することはほとんどありません。 

処理してしまうとその特性がなくなってしまうからです。

 

 

アレキサンドライトの取り扱い

アレキサンドライトをピンセットで丁寧に扱う

 

アレキサンドライトはモース硬度(MAX10)8.5と高く使いやすい宝石で靭性も優れており、衝撃で割れたりしないので、非常に使いやすい宝石です。 

一般的なお手入れは温かい石鹸水で洗浄するのが良いです。 

超音波洗浄機やスチームクリーナーで洗浄してもあまり問題ありませんが、希少な宝石ですので、洗浄時に排水溝に落としたりしないよう気を付けましょう。

 

 

最後に

 

アレキサンドライトは他の宝石に比べると約200年と非常に歴史が浅い宝石です。 

しかし、上質なアレキサンドライトはすでに産出量が減少しており、ロシアやブラジル以外でも産出されなくなる日が来るかもしれません。 

それゆえ「幻の宝石」と言われるのがわかります。 

また、アレキサンドライトはコレクターアイテムとしても人気で、コレクターの人達は売ることがないので、更に希少性に拍車をかけていくでしょう。 

今後も、その希少性から価値が上がっていくと思われますので、今のうちに購入しておいてもいいかもしれません。