エメラルドと同じく5月の誕生石であるヒスイ。
緑色の美しい宝石として中国や日本でも非常に馴染み深く、パワーストーンやお守りとしても人気があり、「東洋の宝石」として古くから重宝されてきました。
漢字で「翡翠」と書きますが、この言葉は中華料理のお店や旅館の名前に使われていたり、翡翠麺や翡翠餃子など食べ物の名前にも使われていたりします。
今回は東洋で人気高いヒスイを紹介していきます。
ヒスイの名前の由来と歴史
ヒスイは漢字で翡翠と書き「カワセミ」とも読みます。
『翡』はカワセミの雄、『翠』はカワセミの雌のことで、翡は赤色で翠は緑色を意味していると言われており、諸説ありますが、美しい羽根の色彩を連想させることから名付けられたとされています。
歴史は日本が最も古く、約7000年前の縄文時代の遺跡から勾玉が出土しており、限られた者だけが手にすることができるステイタスシンボルでした。
約5000年前から現在の新潟県糸魚川市において世界最古の加工が始まったとされ、大珠(たいしゅ)という楕円形になったペンダントのようなものが作られ、日本各地に広まっていきます。
ただ、現在のところ、これが何の意味があって使われていたのか全く分かっていないようです。
弥生時代(紀元前300年~西暦250年)に入ると、管玉なども作られるようになり、富と権力の象徴や呪術、宗教的な用途でも使用されていました。
しかし、古墳時代(紀元前250年~西暦538年)の終わり頃から姿を消してしまいます。
採取が困難になった説や仏教との関わりの説などがありますが、今もなお空白の歴史は謎のままです。
その後1938年、新潟県糸魚川市にある小滝川で再発見され現在に至ります。
海外ではオルメカ文明、マヤ文明、アステカ文明の遺跡から、ヒスイの仮面やペンダントなどが出土しており、中でも有名なのはマヤ文明のヒスイの仮面でしょう。
中国では最近になって約4300年前の遺跡であるシーマオ遺跡から、ヒスイでできた円盤や刀剣などが見つかっています。
近年では2008年に開催された北京オリンピックのメダルにもヒスイが使われています。
また、2016年9月24日、金沢大学で開かれた日本鉱物化学会の総会で国を象徴する石である『国石』に選定されました。
ヒスイの原産地
主な原産地はミャンマー、日本、ロシア、アメリカ、グアテマラ、カザフスタンなどが挙げられます。
中でもミャンマー産は最高級の評価がされています。
日本国内では北海道、新潟、富山、群馬、埼玉、静岡、兵庫、岡山、鳥取、高知、長崎など様々な場所から産出されています。
最も有名なのが新潟県糸魚川周辺地域や富山県朝日町の宮崎・境海岸は「ヒスイ海岸」と呼ばれており、両海岸ともにヒスイを拾うことができます。
また、糸魚川市には小滝川ヒスイ狭、青海川ヒスイ狭の2か所が日本ヒスイの天然記念物指定区域になっており、採掘だけではなく持ち出しも禁止されています。
分類される「硬玉」と「軟玉」とは?
ヒスイには「硬玉」と「軟玉」の2種類があります。
見た目はよく似ており区別がつきにくいのですが、全くの別物になります。
硬玉とは
一般的に古来より宝飾品として扱われているのが硬玉になります。
別名、「ジェダイト」とも呼ばれています。
中国では「玉(ぎょく)」と呼ばれており、宝飾品や女性用のかんざしに使われていました。
また、長寿や健康に効力を発揮することから、宝飾品に限らず、権力者からは重宝されていたようです。
他の宝石の場合、単一の鉱物からできていますが、硬玉はさまざまな鉱物が集まってできています。
ほとんどの部分は「ヒスイ輝石」という鉱物から成り立っているものの、それだけでは見慣れた緑色にはなりません。
そこに鉄やクロムを含むことによって、見慣れた緑色に変わります。
軟玉とは
軟玉は硬玉より硬度が低いことから名付けられています。
別名、「ネフライト」と呼ばれています。
透閃石、緑閃石、鉄緑閃石の集合体から成り立っていますので、宝飾品として扱われる硬玉とは全く違う石であることが言えます。
ただ、その中でも透明度が高く白みを帯びていると「羊脂玉(ようしぎょく)」と呼ばれており、高品質のものは硬玉より高値で取引されることもあります。
ヒスイの特徴と価値
ヒスイは色、透明度、テリなどを総合的に判断し価値を決めます。
色は複数存在し、その中でも価値のある色は緑色で、次いでラベンダー色になります。
色の好みは国によって違いがあり、日本や台湾では濃い色、シンガポールやマレーシアでは淡い色、中国では明るい色が好まれ人気です。
透明度は、横や裏からペンライトで光を当て、浸透するかしないかで判断します。
透明度が高くインクルージョンがない方が価値は高くなります。
最も価値のあるヒスイを琅玕(ろうかん)やインペリアルジェードと呼んでいます。
透明度が高く鮮やかな緑色をしており、油を垂らしたようなとろみのあるみずみずしい質感をしています。
ヒスイの取り扱い
モース硬度(MAX10)6.5~7と少し柔らく、靭性はダイヤモンドより優れており、傷が付きやすいものの衝撃には強い宝石です。
化学物質や酸に弱く、化粧品や汗が付着すると変色したり腐食する可能性があります。
また、油分が必要な宝石です。
乾燥すると変色してしまうので、乾燥させないように気を付けなければいけません。
光沢感がなくなってきている場合は油分が少なくなってきています。
その場合、指の腹で優しくなぞるだけで光沢感が戻りますので、たまに触るだけで光沢感を保つことができます。
洗浄する場合はぬるま湯に中性洗剤や石鹸を少量溶かし、柔らかい布や筆などで優しく表面の汚れを落とし、柔らかい布やジュエリー専用のセーム皮などで、優しく水分を取り除きましょう。
最後に
ヒスイは日本が最も古い歴史を持ち、新潟県糸魚川市の一部のエリアでは天然記念物に指定されたり国石に選定されるなど、私たち日本人にとって馴染み深い宝石だということがわかりました。
また、東京の品川には翡翠専門の翡翠原石館、新潟県糸魚川市にはフォッサマグナミュージアムがあり、ともに数多くのさまざまなヒスイが展示されています。
もし、行く機会があれば、きっとヒスイのパワーに心動かされ、ヒスイの魅力を感じ取ることができることでしょう。