普段の生活において稀に「金貨」という言葉を聞くことがあります。
何となく、金で作られ高価なものであることは理解していても、詳しくは分からない人も多いのではないでしょうか。
金貨は様々な国の政府機関が発行しており、金貨そのものに価値があるもので、株や国債とは違った価値を持っています。
その金貨の価値や今後収集する人も簡単な基礎知識を知っておくと役に立つこともあるでしょう。
目次
金貨の歴史
世界で初めて作られた金貨は、諸説ありますが、紀元前7世紀頃のリディア王国(現在のトルコ西部)で発行されたと言われています。その一方で紀元前11世紀頃の中国でも発行された形跡があると異説もあるようです。
中世に入り西欧では金貨の鋳造がされず、東方との貿易で得られる金貨はあったものの、長らく銀本位制で銀貨が中心でした。
しかし、十字軍派遣(キリスト教徒が聖地エルサレムをイスラム教徒から奪還するための軍派遣)を契機に金貨への関心が高まっていきます。
初めにラテン帝国で金貨の鋳造が行われ、1252年にフィレンツェ共和国のフローリング金貨、ジェノヴァ共和国のジェノヴァ金貨、1284年にヴェネツィア共和国のドゥカート金貨などが鋳造され、貿易などにも多く利用され後の金本位制へと繋がったとされています。
ちなみに、ドゥカート金貨は今もなお鋳造され続けています。
1816年イギリスで世界初の金本位制(金を国の貨幣基準として、貨幣を金貨にすること)が確立されます。
しかし、限りある金で大量の金貨を流通させるのは不可能だったため、紙幣であったり、他の貨幣も流通させました。
その後、イギリスにとどまらず世界各国にも広まりましたが、1937年のフランスを最後に世界各国の金本位制は終わりを迎えました。
ちなみに金本位制は、当時南アフリカを筆頭に世界各地で次々と金鉱が発見され、多くの金が世界に出回ったことや貿易の中心であったイギリスに貨幣基準を合わせた方がスムーズに取引が行われると考えられたからです。
日本では明治時代に入るまでは、小判・分金・穴銭などの貨幣を流通させていました。
しかし、明治時代に入り香港やイギリスから貨幣用の鋳造機を導入し、明治3年(1870年)から銀貨の鋳造を行い、翌年の明治4年(1871年)8月から金貨の鋳造や発行が行われました。
大きく分かれる金貨
収集型金貨
収集型金貨とは、記念貨幣のうち金素材を使用している金貨のことを言います。
オリンピックなどの国家的な行事で発行されることが多く、定期的に販売されなければ、枚数も限定されており、発行枚数が少ないです。
流通を目的としていないので、趣味的な収集や希少的な付加価値への期待感から購入されることが一般的です。
通貨型金貨
金融機関において額面通り発行される金貨になります。
日本では1986年に10万円記念金貨(天皇陛下御在位60年記念)がグラム当たりの金価格より額面が高く設定され販売されたことがありました。
しかし、これは世界的に見ても例がなく極稀なことでした。
地金型金貨
地金型金貨の多くは投資目的として発行されている金貨の一種です。
額面で言えば、金価値より低く設定されていますが、販売価格は各国政府(造幣局)が鋳造し、重量・金の品位(貴金属合金の中に該当する貴金属の最低含有率)を保証しており、鋳造コスト・流通コスト・プレミア価値が計上されていますので、グラム当たりの金価格より高くなっています。
また、法定通貨としての額面・重量・金の品位が表示されていますので一般的には投資用ですが、発行国や年代によって一部デザインや品位を変えることもあり、収集型金貨としての人気があります。
クルーガーランド金貨
発行:南アフリカ共和国造幣局
品位(純度):917/K22
一般的な地金型金貨はK24ですが、イーグル金貨はK22で鋳造・発行されています。
金が91.67%、銅が8.33%含んでいるので、銅による赤みが特徴です。
表面には、南アフリカに位置したトランスヴァール共和国の元大統領の肖像と裏面にはウシ科であるスプリングボックの動物画が描かれています。
メイプルリーフ金貨
発行:カナダ王室造幣局
品位(純度):9999/K24
メイプル金貨は信頼があり評価が高いとして金貨の中では世界一の流通量です。
そのため、日本国内でも流通量は多く1980年代にはブームを起こしています。
1979年から鋳造・発行されており表面にはエリザベス二世の肖像と裏面にはメイプルシロップで使われるサトウカエデの葉が描かれています。
パンダ金貨
発行:中国造幣公司
品位(純度):999/K24
1982年より発行され、表面にはジャイアントパンダ裏面には北京天壇が描かれています。
表面のジャイアントパンダは毎年デザインが変わり、発行年によってはプレミアがつき高値で売買されるため、収集金貨としての性質を持ち合わせています。
カンガルー金貨
発行:パース造幣局
品位(純度):9999/K24
オーストラリア西にあるオーストラリア州の中心部から南東に位置するオーストラリア最古の造幣局で鋳造・発行されています。
カンガルー金貨は、毎年カンガルーのデザインが変わるので、収集金貨としても人気があります。
過去には、自然の金塊(ナゲット)がデザインされていることもあり、ナゲット金貨と呼ばれていたこともあります。
イーグル金貨
発行:アメリカ合衆国政府
品位 (純度) :916/K22
一般的な地金型金貨はK24ですが、イーグル金貨はK22で鋳造・発行されています。
そのため、合金である銀や銅が混ざっているので耐久性には優れています。
表には自由の女神が描かれており、裏面には鷲のオスがオリーブの枝を持ち、メスやヒナたちいる巣の上を羽ばたいています。
ブリタニア金貨
発行:イギリス王立造幣局
品位(純度):917/ K21.6
※2013年からは9999/K24となっています。
コインに描かれた肖像には海岸の岩の上で、右手に三又のホコを持ち、左手にはユニオンジャックの盾とオリーブの枝を持ったブリタニア像が描かれています。
ウィーン金貨
発行:オーストラリア造幣局
品位(純度):9999/K24
オーストラリアで800年以上の歴史を持つ造幣局で鋳造・発行されています。
1989年から毎年発行される地金型金貨で表にはパイプオルガン、裏には楽器のヴィオラ・チェロ・バイオリン・ハープ・ファゴットなどが描かれています。
バッファロー金貨
発行:アメリカ合衆国造幣局
品位(純度):9999/ K24
アメリカ合衆国で初めて鋳造・発行されたK24の地金型金貨になります。
その名の通り、裏側にはアメリカのバイソンが描かれています。
最後に
金本位制は貿易の中心であったイギリスから広まり1937年世界各国で終了を迎えましたが、金は流通量が常備できない希少鉱物であった理由以上に、魅力的な金の使い道が別にあったからではないでしょうか。
それが、今私たちが普段身に着けている指輪やネックレスであり、ファッションを着飾りお洒落に映えるアイテムの一つとして存在感を発揮しているのでしょう。