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コラム

買取された貴金属や宝石、その後どうなるの?


貴金属の買取

 

2000年以降、金相場の上昇に伴ってショッピングセンターや市街地を中心とした商店街には「貴金属買取します」という看板を掲げた買取店が急増し、不要となった貴金属や宝石を売却された方も多く、今や私たちにとって身近なサービスとなりました。 

もちろん、売却が成立すればその時点で所有権は買取店に移り手元から離れるため、買取後どうなっているのかは不明です。 

そこで今回は、買取された貴金属や宝石の行方について紹介していきます。

 

 

リユース品として再販される

中古品として並べられているダイヤモンドジュエリー

 

まず売却された貴金属製品はお店側で仕分けされ、リユース品リサイクル品の2つに分けられます。 

リユース品となるのは主に宝石が飾られたデザイン性のあるジュエリーやブランドジュエリーで状態が良いものになります。

 

 

店頭で販売

 

今ではショーケースを設置しジュエリーの販売を行っている買取店が増えています。 

買取後は修理、洗浄、クリーニングを行い、「リユース品」「ユーズド品(USED)」として店頭に並べられます。 

このように自店で買取と販売を行っているお店であれば製作コスト、流通コストがかかりません。 

そのため、比較的お手頃な価格で販売されているケースがあります。 

また、カットされたコスト分を買取価格に上乗せしてくれる場合もあるようです。

 

業者を介して販売

 

買取を専門に行っているお店、自店で再販したが売れなかった、このような場合は主に2通りの方法で売却されているようです。 

 

1つ目は再販に強い業者に売却して、売り買いの差分で利益を得る方法です。

これだけ聞くと非常に簡単に思えるかもしれません。

ただし、業者によって得意分野もあれば不得意分野もあるため、宝石に強い、ダイヤモンドに強い、ブランドジュエリーに強い、というようにそれぞれの分野に強い業者を見極め売り分ける必要があります。

 

2つ目は全国各地で開催されている業者の市場(オークション)で競りにかける方法です。 

競りにかけられたジュエリーは多くの業者の入札によって一番高値で落札され、その金額から市場開催者への手数料を引いた差額で利益を得ます。 

近年では、この業者の市場に多くの日系またはインド系のバイヤーが参加しており、日本国内で受け入れられなくなったジュエリーであっても海外では高値で取引されることがあり、想定以上の高値で落札される場合があります。 

しかし、逆に想定以下の価格で落札されることもあるようなので、一長一短とも言えそうです。

 

 

溶解され新たな姿へリサイクルされる

溶解される貴金属製品

 

リユース品の販路について説明しました。 

それでは、リユース品に分類されなかったリサイクル品はどのような処理が行われているのでしょう。

 

 

新しい装飾品として

 

デザインが古くなってしまったジュエリーや宝石が取れてしまった指輪、切れてしまったネックレス、片方しかないピアスやイヤリングなどは溶かして不純物を取り除いて純金や純度の高いプラチナに姿を変えます。 

この工程を「精錬」と呼んでおり、金であれば「K18」「K14」に混ぜられている銀や銅を取り除くことができます。 

抽出された純金や純度の高いプラチナは新しい装飾品の材料や、資産価値のあるインゴットとして販売されます。

 

 

工業用として生まれ変わる

 

精錬によって生まれ変わった純金や純度の高いプラチナは装飾品の材料や投資以外の分野でも活躍しています。 

 

プラチナであれば、ご存じの方も多いかも知れませんが、自動車(ディーゼル車)のマフラーで使用されています。 

全体需要の40%ほどを占めており、これは装飾品の30%を大きく上回っています。 

その他には、液晶テレビやパソコンのハードディスクの電化製品、医療器具のペースメーカーやカテーテルにも使われています。 

 

一方の金は、全体需要の7%ほどを工業需要が占めています。 

もちろんプラチナの40%と比較すると占める割合が少なく感じるかもしれません。 

しかしながら金とプラチでは全体量が大きく異なります。 

2019年で言えば金の4,355トンに対しプラチナが263.9トンであることから、たとえ7%であっても工業需要量が327トンにのぼります。 

用途としては、身近な存在となっている携帯電話やパソコン、デジタルカメラ、ゲーム機などになります。 

 

 

宝石の行方は?

指輪の枠から取り外された宝石

 

リサイクルされる装飾品にも宝石があしらわれている製品が多く存在しているため、指輪であれば枠と宝石に分けられます。 

指輪の枠は傷んでいれば中古品として断定できますが、宝石の場合はリカット(新たにカットし直す事)すれば、それが新品なのか中古品なのか判別することは不可能となるため、「中古」という概念が宝石にはないと言えます。 

それ故、宝石は新しいジュエリーの材料として再還流されることが一般的です。

 

 

リユースとリサイクルの繰り返し

リユース品として並べられているジュエリー製品

 

ジュエリーに限らず電化製品、自転車、楽器、釣り道具、衣類、キッズ用品などさまざまなアイテムが売り手から買い手である買取店やリサイクルショップへと渡り、そこから「リユース品」または「ユーズド品(USED)」として次の買い手へと渡っていきます。 

その繰り返しも時が経てば、電化製品であれば数年~数十年で寿命、衣類ならせいぜい3年程度でスレや型崩れが、そしてジュエリーであればキズや歪み、デザインが古くなったなどの理由で使われなくなります。 

ただジュエリーの場合は、指輪であれば枠から宝石を取り外しリカットすれば新たなジュエリーへと生まれ変わります。 

また、枠部分は精錬することにより金、プラチナ、銀、銅などを無駄なく抽出することができ新しいジュエリーだけではなく、さまざまな用途に合わせた姿へと変えることができ、半永久的にリユースとリサイクルが繰り返されています。

 

 

最後に

 

以前は「中古品」に抵抗を感じていた人が多かったものの、買取店やリサイクルショップの増加、またフリマアプリの普及によって、いつしか「リユース」「ユーズド(USED)」という表現に変わり、それと同時に私たちの「中古品」に対する考えも少しずつ変わりました。 

その結果として、売り手は高値で取引してもらい、買い手としては定価より安値で購入することができる市場が確立し、消費者にとって買取店やリサイクルショップはなくてはならない存在になりました。 

 

また貴金属は、精錬技術の発展によってリユース、リサイクルを繰り返すことができる希少な資源であることもわかりました。 

今では多くの方が当たり前のように使っている携帯電話やパソコンの普及も、金やプラチナのリサイクルがなければ、もしかすると存在していなかったかもしれませんね。