希少価値の高い貴金属である金、プラチナ、銀に宝石が飾られたジュエリーは大人の女性であれば憧れのアイテムのひとつではないでしょうか。
宝石専門店やリサイクルショップに行くと、そのような商品は数多くラインナップされており、計り知れない魅力で惹きつけられてしまいます。
それは宝石という希少性であったり、永遠の輝きを彩る見た目の美しさ、そして何より自らの輝きをより一層高めてくれる想いがあるからでしょう。
その役割を担っているのが宝石の質や大きさ、カット加工はもちろんのこと、どのように宝石が留められているかで見た目の印象や雰囲気を大きく左右します。
今回はジュエリー加工の中でも一番大切と言われている石留め(セッティング)について紹介していきます。
目次
石留め(セッティング)とは
石留めとは、ジュエリー加工の最後に行われる工程になります。
出来上がった貴金属の枠に宝石を留める加工で、ジュエリー業界では「セッティング」と呼ばれることもあります。
石留めは宝石が取れないよう、しっかり留めなければならないという目的だけではありません。
枠のデザインと石留め箇所を一体化させ、ひとつの商品として全体を美しく演出させる重要な役割を担っているのです。
宝石に傷をつけず、かつ美しく留めなければならないため、非常にデリケートな加工作業で高い技術が求められています。
石留めの種類
ジュエリーをお持ちの多くの方は、貴金属の枠に飾られている宝石だけに意識しがちです。
もちろん、その貴金属の枠に留まっている宝石によってデザインがほぼ決定しているからです。
しかし、宝石本来が持つ輝きであったり、美しさの表現方法は石留め技術によって変わっています。
では、普段あまり気にしないであろう、一般的な石留めから珍しい石留めをご紹介したいと思います。
パヴェセッティング
パヴェとはフランス語で、「石畳」という意味です。
指輪の表面にメレダイヤと言われる小さなダイヤモンドを石畳のようにビシーッと隙間なく敷詰めて石留めする技法です。
指輪の周囲全体にパヴェセッティングしたデザインを「エタニティリング」、半周のものは「ハーフエタニティリング」と言います。
爪留め
爪留めは最も多く使われている石留めの方法で、爪と呼ばれる石枠周囲に立てられた棒を倒して宝石を留めます。
爪の長さは長いものもあれば短いのもあり、形の多くは丸みを帯びており、4本爪か6本爪が主流で8本爪のものもあります。
爪留めはダイヤモンドの輝きを際立たせるので、婚約指輪の定番で人気を誇る立て爪デザインが有名です。
また、6本爪は『ティファニーセッティング』と言われ、ティファニーが1886年に考案し世に送り出しました。
このティファニーセッティングは130年以上に渡り今なお人気の指輪です。
覆輪留め
深さの浅い円筒状の台に宝石を入れて、縁を倒して石留めをする方法です。
丸く覆っているのもあれば四角く覆っているのもあります。
爪留めであれば爪が洋服に引っ掛かることがありますが、覆輪留めは引っ掛かることもなければ宝石が外れるような心配もありません。
玉留め
宝石が入る穴をあけ、宝石の真ん中を中心とした四方に小さな玉を作り、その玉で石留めをする方法です。
シンプルなデザインですが、宝石を留める4つの玉が可愛らしい印象を与えてくれます。
マス留め
四角い升目を彫り、その升目に宝石を入れる穴をあけ、四隅に爪を作りその爪で留める方法です。
そのため、宝石同士が隣り合わせになることがなく、宝石と宝石の間には貴金属で仕切られるようなデザインです。
また、「亀甲留め」「レモン留め」と呼ばれる留め方もあります。
「亀甲留め」は五角形・六角形の升目で、「レモン留め」はマーキース(アメフトボールの楕円形で、上下左右を鋭く尖らせた形)型の升目をしています。
彫り留め
地金に穴をあけ宝石をはめ、その周りの地金を「たがね(金属を切断したり削ったりする鋼鉄製の工具)」という道具を使って爪を掘り起こし、その爪で石留めをする方法です。
先述した玉留めとマス留めも彫留めの種類です。
レール留め(チャンネルセッティング)
指輪の表面に溝を彫り、その溝に宝石を隙間なく並べ、両脇に地金のレールを挟み込み留める方法です。
一つ一つの宝石を爪で留める手間がなく一見簡単そうに思われがちですが、隙間なく宝石が並んでいるため、宝石の高さや角度によってズレが容易に発見されることから、非常に技術が必要とされています。
逆を言えば、他の技法は宝石と宝石の間に隙間があるため、多少のズレは発見されにくいと言えるかもしれません。
テンションセッティング
一般的な石留めで用いられる爪を使わず、かつ地金自体に穴をあけることもなくダイヤモンドを留める方法のひとつです。
宝石をセッティングする箇所が途切れており(「 C」を左に90度回転させたようになっている)、途切れた内側の左右に溝を彫り、その溝に宝石をはめ込み、地金の張力により宝石を支える留め方で、宝石が宙に浮いているように見えます。
これはダイヤモンドに光が上下左右いろんな角度から当たって一番輝く留め方で、1873年ドイツで設立された『NIESSING(ニーシング社)』が1979年に開発し「ニーシングセッティング」と呼ばれ、特許を取得しています。
はさみ留め
テンションセッティングは宝石をセッティングする箇所が完全に途切れているのに対し、はさみ留めは「C」の開口部分の一部が繋がっています。
テンションセッティング同様に溝を彫り、その溝に宝石をはめ込みます。
この技法でも他方から宝石に光が当たるため、非常に美しく輝きます。
八光留め
宝石を中心に放射状に複数の線が掘られたデザインで、星のように見えることから星留めや御仏の体から射す光の後光にも見えるため、後光留めとも言われます。
ミステリーセッティング
インビジブルセッティングとも言われ、一般的な石留め方法ではなく、宝石同士をかみ合わせて留める方法で、宝石に溝を彫り台座(宝石をセットする部分)に作ったレールに宝石をスライドさせてセットします。
この技法は1906年にフランスで設立されたVan Cleef&Arpels(ヴァンクリーフ&アーペル)が開発した技法で、1930年代から用いられており、特許を取得しています。
このミステリーセッティングには主にルビーを使のですが、理由は一番映えるからだそうです。
最後に
宝石のカットは宝石を美しく輝かせ、その魅力を引き出すための技術ですが、それと同じように、ジュエリーになったときに宝石をより美しく輝かせ、その魅力を最大限に引き出すための技術が石留めで、先達から引き継がれ、技術の進歩とともに新しい技法も開発され現在に至ります。
その結果として人々はジュエリーという存在に惹きつけられてしまうのかもしれません。
また、普段使われているジュエリーがどのようなセッティングが施されているのか見てみたり、今後購入する際は、施されているセッティングを確認しながら検討すれば、今以上にジュエリーの魅力を見出すことができ あなた自身の輝きをさらに高めてくれるはずです。